続き
2つ目の理由としては、心理的な側面も関わってきます。
私たちは作業中、常に同じ姿勢ではなく、ときに行き詰まれば天を仰いだり、下を向いたりしながらアイデアを出していることが日常的にあります。
また、作業に疲れた時には背もたれにもたれて少し休憩したり、姿勢を変えることによって無意識に気分や感情をコントロールしようとしています。
ここで姿勢による心の変化についての実験を紹介します。
この実験では「直立」「後傾(背もたれにもたれた姿勢)」「顔面下向き前屈」「顔面前向き前屈」4つに分けた座位姿勢において、直立姿勢だけでなく後傾姿勢においてもワーキングメモリという、「短い時間で情報を記憶し処理するための領域」の活動が高まったと報告しています。
身体と心の関係を専門的に扱う身体心理学という学問において、姿勢は意識な側面と無意識な側面の両方を持っており、身体と心をつなぐものとされています。
作業に取り組む姿勢とは、文字通り身体のことを表しているだけではなく、私たちが昔から言われているような物事に取り組む意識という意味での姿勢という2つの意味で重要だということがわかります。
つまり、背もたれがあることによって様々な姿勢がとれることは、物理的にも心理的にも姿勢の固定化を防ぎ、さらにワーキングメモリという作業効率を高めるときに重要な脳の領域が活性化しやすいという点で重要だということがわかります。
身体のことを知ることで仕事の生産性も高まります
今回は、生産性を高めるために椅子には背もたれが必要かという内容について、主に「身体的な姿勢」と「心理的な姿勢」という2つの意味から解説しました。
結論としては、背もたれはあったほうが良いということになりましたが、ここまで記事を読んでくださった皆さまであれば、背もたれにもたれているだけでは生産性が高まらないことは理解していただけたと思います。
良い姿勢とはそのときの状況によっても異なっていて、今回は「生産性」という観点から解説しましたが、例えば腰痛予防や肩こり予防のための良い姿勢であれば、内容は変わってくるでしょう。
また個人の身体の特徴や日頃の身体の癖などによっても詳細は変わる可能性があります。
そういった意味では、土台の知識は重要ですが、より詳しく身体のことについて考えて生産性を高めていきたいのであれば、専門家からアドバイスは必要かもしれません。
現在では、オンラインで運動指導しているセラピストやトレーナーも多いため、自分にあった専門家を探してみるのもいいかもしれませんね。
今後もビジネスパーソンの生産性を高める知識を紹介していきたいと思います。
今回の記事が生産性を高めたい皆さまの参考になればと思います。